今週の金融工学の授業のケースワークは「ソニーの事業多角化は成功したのか」というテーマでした。ソニーといえばエレクトロニクス部門の不振、特に薄型テレビでの立ち後れが話題に上がっています。ソニーはエレクトロニクス以外にもゲーム、音楽、映画、金融と幅広い多角的な事業展開を行っています。ケースワークでは1997年から2004年までの各部門ごとの営業利益の数値から「ソニーの事業多角化は成功したのか」というテーマを掘り下げていきました。
各部門の1997年から2004年までの営業利益の平均値をリターン、標準偏差をリスクととらえて、x軸にリスク、y軸にリターンとする表にそれぞれの部門の数値をプロットします。次に1997年から2004年までのソニー全体のリスクとリターンのから一部門あたりのリスクとリターンを算出して同じ表にプロットして、各部門とソニー全体のリスクとリターン位置関係を分析します。
そこから読み取ることができるのは、多角化の効果としてリスクとリターンの構造の変化が現れていることです。
1.追加リスクなしで収益が増加している
エレクトロニクス部門単体の1997年から2004年までの1年あたりの平均の収益が992億円に対しリスクは1266億円ですが、経営の多角化によってソニー全体の1年あたりの平均の収益が2588億円に対しリスクは1362億円になります。ほぼ同じリスクの負担で収益が大きく増加しています。
2.収益性の向上
収益性をリターン÷リスクで算出すると映画部門以外の全ての部門で収益性の向上が見られます。
リスクの減少で、必要資本が少なくなり、また将来キャッシュフローの割引率が減少します。これにより企業価値の向上につながるという効果を期待できます。少なくともこの分析した7年間の数値から、ソニーはリスクを増やすことなくリターンを大きく伸ばすことができました。
「ソニーの事業多角化は成功したのか」というテーマに対しては主観的な判断も入ってこようかと思いますが、アプローチの手法としてこの様な数値的な方法が非常に有効だと感じました。まさにポートフォリオ理論を現実的な世界で活用ができました。
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